医師・中村哲さんが亡くなって3年が過ぎた。
昔から「この人は異国の地でどうしてここまでやるのだろう」と不思議に思えてならなかった。
私自身の人生を振り返って、どうだろう。
そこまで、人のために尽くすことをしてきただろうか。
答えは、まったく否。
本書を手に取ると、いかに自分が自分のためだけに生きてきたを痛烈に思い知る。
中村哲さんはクリスチャンだが、やっていることは仏教徒のようだ。庶民のためのインフラ整備は奈良時代の仏僧・行基のようだ。
そして、イスラム教徒の文化の中で生きた。
宗教戦争なんてばかばかしい。本来は人類の幸福のためにあるのが宗教だ。
氏の生き様は、まさに私たちにそれを見せつけてくれている。
それこそが今の世に残された私たちが守り、受け継ぐべき財産なのだろう。
中村氏のようには到底なれないが、せめて自分の周りに対して、何かできそうな気がする。
亡くなったことはあまりに痛ましい事件だが、せめてもの救いは、中村氏自身、用水路作りが楽しかったことだ。
そう、人のためとは言え、ただ苦役なだけでは続かないかもしれない。
根底に「好き」があるのは、重要。
存分に生を全うした中村哲氏の生き方は、私にも少なからぬ影響を与えた。
氏の書籍はたくさん世に出ているが、いささか独特の書きぶりに読みにくさを覚える読者には本書をまずはお薦めしたい。
そのあと、興味があればこちらをどうぞ。
こちらも対談集なので読みやすいだろう。
しかし、やはり氏の伝えたいことをダイレクトに受け取りたいなら、次のような単著をお勧め。