浦志万太郎’s 読書 blog

読んだ本の備忘録

長谷川卓『嶽神伝 血路』

誰だかが本シリーズを薦めていたので、買ってみた。誰だっけ?

本書はその第1巻。

ノンストップ時代アクションシリーズ・エピソード1と謳うだけあって、一気読み。

戦乱において、依頼主の頼みに応じて、人を逃がす「落とし」の専門集団「七つ家」。

謎めいた山の民の活躍と死闘を描く。

 

坂本龍一・中沢新一『新版縄文聖地巡礼』

前に購読しようと思って買わないでいるままに絶版になって後悔一入だったのが、新版となって登場。今度こそは迷わず購入。いつまでもいると思うな、親と本だ。

予想以上に面白かった。

坂本龍一氏は亡くなってしまったが、こうした本を読んでいると、まだまだやりたいことがたくさんあったんだろうなぁと思うと同時に、旧石器や縄文などの原始に関する考えの深さに感嘆してしまう。団塊の世代による現代文明批判的な対話が、縄文遺跡を巡りながら繰り広げられるのも、いろいろと刺激的で、考えさせられる。

豊富に掲載されている写真がまたイイ。とくに坂本氏の真剣なまなざしには、なにか心に響くものがあった。

 

沢木耕太郎『キャパの十字架』

スペイン戦争の「崩れ落ちる兵士」で一躍著名となった戦場カメラマンのロバート・キャパに関する衝撃のルポタージュだった。

著者による執念の調査により、世界中の誰もが到達し得なかった「真実」にたどり着く。

この本を読んで興奮しない人はいないのではないかと思ってしまったりするので、

つい、周りに薦めると、みんな絶賛してくれる。

自分が書いたわけではないのに嬉しい…。(ちなみに私に気を遣うような人たちではないです、たぶん)

 

真実に辿り着くのは、大学で偉そうにしてる学者だけじゃないということを改めておもう。第17回司馬遼太郎賞受賞作。

続編『キャパへの追走』もあるが、断然、こちらが良かった。

 

 

牟田都子『文にあたる』

たぶん、プロの校正者という職業があるのを初めて知った。いや、頭の中では当然知ってたと思うが、その存在をまともに考えたことはなかった。

本書は、校正者の苦悩と矜持が短編エッセイのように軽やかに描かれており、本好きとしては、予想以上に楽しんで読めた。

これからは、本を読むたびに、その背後に校正者の存在を感じることになるかもしれない。

そして、誤字・脱字をみつけたとき、「見つけてやった!」という喜びより、校正者に同情の念を抱いてしまうだろう…。

 

 

ジョン・ウィリアムズ『ストーナー』

 

 

評判がいいというので購入。

特に事件は起こらず淡々と文学研究者の人生を丁寧に描いているというような評判に興味をそそられ。

しかし、読んでみると、私には事件の連続のようにハラハラ読めた。というか、なんか、なぜだか、共感してしまう部分が多すぎる…。主人公のように文学研究者でも大学の教員でもないのに、なぜ、自分の人生と重なってしまうのだろう。

 

ストーナーは幸せだったのだろうか。妻は?娘は?

人の幸せは他人にはわからない。

でも、なんだか気分がゆっくりと優しくなっていく、この人生を緩やかに受け入れていける、そして、静かな幸せがそっと訪れるような読後感。

傍らに大切において置きたい本に出会えた。

新田次郎『孤高の人』

学生時代と違って本を読む時間を作るのは大変。

 

こちら、漫画化もされた名作。

富裕層に独占されていた昭和初期の登山界に、それとは真逆の加藤文太郎の青春長編。

実在の人だ。

本屋でたまたまページをめくり、「高取山(神戸市)」という懐かしい名前がいきなり出てきて、即購入。

集団で登る登山ではなく、あくまで単独行。仕事の傍ら、登山の訓練。そして愛すべき人との出会い。数々の記録を1人で打ち立てていく。

自分には到底真似できないが、仕事の傍ら、やりたいことがある私に勇気を与えてくれた。一人でやり抜くことを選んだ生き方にも共感!

 

 

沢木耕太郎『深夜特急』

言わずと知れた名作。私はこの本をアジア海外赴任の時に持って行って、貪るように読んだ。

 

日本語に飢えてたというのもあるが、

周りに日本人のいない中での仕事だったので、勇気づけられもした。

思えば、活字中毒になったキッカケが本書だった。

 

旅の後、何年もたってから書いた文章もあって、それが事実だったか、自分の中で膨らんできたことだったか分からない部分もあったとか。ノンフィクションとフィクションの境界の曖昧さを考えさせられもした。

私はどちらかというとノンフィクション派だったが、本書の読後、小説におけるノンフィクション性の側面を読み取ることも面白くなり、いまは分け隔てなく読んでいる。

 

コロナ禍、ユーラシア大陸を自由に駆け巡る著者の旅に

本の中で同行してみるのもいいかもしれない。